2010年 08月 24日 ( 1 )

幻想の牢獄:夏の妄想

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大階段から降りてくる人と地下から上がってくる人、通りから入って
エスカレーターへ向かう人の流れがぶつかりあう交点に、
ちょうどいまの時期は壁面からミストが噴き出す。

建築中からすごく気になっていたのだけれど
暑さでぼうっとした頭でここに入ると、目くらましのような感じにとらわれる。
それは、だれか別人の頭の中にいる感覚。
別人とはイタリアの画家ピラネージ(1720-1778)。
この空間は、ピラネージがくりかえし描いた
牢獄の空間と酷似したパースペクティブを持っているのだ。

ピーク時には上下水平、別方向の流れが混然と交差する。
空中通路が頭上を貫く。垂直に立ち上がるベクトルは、しかし天面で阻まれる。
吹き抜けではない。駅ビル内部の、閉ざされた空間だ。

別人の頭の中にいる感覚
…といえばフィリップ・K・ディックのSFの中核だが、
ピラネージのイメージした牢獄の透視図は、百年、二百年の時を越えて
フリッツ・ラングの映画「メトロポリス」(1926)や、ディック原作の
「ブレードランナー」(1982)まで通底した閉所恐怖症的な空間を見透している。

新しい駅舎の建築家が何を意識したかは不明だが、その意図にかかわらず
ここにもピラネージの想像=創造したイメージが、圧倒的な力で、生きている。

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あくまで妄想です。すべて暑さで僕の脳内回路がショートして生まれた連想です。

ここは南海難波駅北口大階段、僕の通勤路。
この角度から駅に入ると、僕の妄想の力は強くなる。
僕らは未だに18世紀の画家の強迫観念の中にいる、という。



Giovanni Battista Piranesi
参考:

1.マルグリット・ユルスナール著/多田智満子訳「ピラネージの黒い脳髄」(白水社)
あるいは
2.ピラネージ画像データベース Opere di Giovanni Battista Piranesi
(UT-PICURE(東京大学大学院人文社会系研究科 COE象形文化研究拠点))
8巻31葉へのリンクは
http://www.picure.l.u-tokyo.ac.jp:8080/FMPro?-db=sougouwebcp.fp5&-format=%2fdetail%5fcdml%5fj.html&-sortfield=image%5fid&-op=eq&volume=8&-max=1&-skip=45&-token.0=25&-find=
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by ichirographics | 2010-08-24 16:40 | 照応