白い紙の束に

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最初に想像するのは白い紙の束。
そこに思念が行を成し、陰影がにじむ記憶が図版となる。

白い束をおおう表紙に海、を考え、
角背に光沢ある紺クロスを貼って大海原を託した。
さらにそれを包むものとして空気をふくんでやわらかく白い紙で函をつくる。
大気の外函、海の表紙。それに紺のスピン、明るい青の花切れ。水色の見返し。
半透明の紙に湧きあがる気泡の図像を刷って別丁扉とし、本文へ導く。
これで、この本は船のように出航することができるだろう…

このイメージが夏にできて、あとはそれに従って
こつこつ、構成していったんだった。

本は子どものころから貪るように、目に捉えた文字の形や絵のかたまりが
頭に沁みこむまで、感覚ぜんぶをつかって、読むものでした。
美術学校を出たあと、イラストレーターのスタジオを経て
20歳すぎに勤めた会社の、業務のひとつが
大型本や企業の社史といった書籍をデザインする仕事。

読む側の気持ちで本をつくるのは難しいことではなかった。
むしろめっぽう楽しい仕事。

・・・ということで何十年後の現在にいたるまで、
僕の事務所の業務のひとつの分野としてブックデザインは続いています。

今は制作の工程が、すっかり個人のコンピュータのなかで完結してしまいます。
自在なようで、これが狭い、ある種閉じた世界だという気がずっと、しています。
見方が独善的になる、という反省も。

かつて文字組みのこと(緊張感、リズム!)は写植屋さんに、
写真(深み、あでやかさ)のことは製版屋さんに、というふうにして、
それぞれの分野のベテランで、気概あるおじさんたちに教わりました。

今回、組版はひとりで取り込まず、依頼したのが
一昨年知り合った、でもじつは30年以上前に、ある書籍を一緒に作ったことで
かかわりがあったことがわかった人たち。
なので、お互い、よう生き残ってはった!と涙の^^;再会をした人たちでした。

製本、製函のプロセスはもちろん専門のひとたちの手を経て、
それぞれのベテランにお願いできたことは良かった。
そのおかげで僕は著者の意図を生かしつつ、企業体の歩みが
有機体のように浮かびあがってくるかたちづくりに専念することができました。

ということで、装丁プランから、基本フォーマットづくりという僕の仕事では、
おなじみの鉛筆が活躍しました。

かつてやっていたことに戻る、というかまた巡ってくるんだな、と思います。
これはまた続いて、そしてまた巡っていきます。

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by ichirographics | 2016-06-12 14:42 |

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