2011年 01月 29日
16年
天五中崎商店街。
古書店の、奥から店先へ、ゆっくりと
本の束を捧げ持つように、何度も往復しているおじいさん。
店開きのしたくだ。
その邪魔にならないように
ワゴンから川端康成、中の棚から大岡信をえらんで、500円。
奥のレジで払い終えて出るとちゅう、一冊の背に目がとまった。
ぼくが装丁した本だ。
手にとって、見返し、扉から本文の感じをゆっくり、久しぶりにたしかめる。
昔の自分だけど、いい感じでつくられている。
カバーもまだきれいで、天がかすかに汚れているくらい。
僕が出版社からもらったぶんはあまりないので、買おう。
レジに戻ってその一冊をさしだすと、
「それは珍しい本ですよ」と店主。
これは、出来あがったときに著者の藤本さんが、
僕の今までの本にない感じやな
と気に入ってくれたのだ。
「これは、僕が装丁した本なんです。むかし、若い頃に」
と僕が言って、扉裏のクレジットをふたりで見る。
ゆっくり、高齢の店主は言う。
「本は、巡りあわせ、って言いますよ。本との出会いはね」
通りに出て、袋からまた本を出す。
自分がレイアウトした奥付を、あらためる。
1995年1月6日発行。
16年経っての巡りあい。
by ichirographics | 2011-01-29 20:35 | つながる