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アートブリッジ展、そして松岡さんのこと

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昨日、早めに片づけて難波から約10分、堺駅へ。
イルミネーションで飾られた大小路(おおしょうじ)を、強風が吹く中
路面電車の軌道をわたり、山之口商店街のギャラリーいろはにに着いた。
「アートブリッジ/バークレー美術家交流展」初日。
オープニングパーティに続々と人が集まってくる。
ひとつひとつ、いろいろな作品を、すべて、じっくり見るには
ほんとに人が一杯の盛況。
せっかくの機会、出品作家やゆかりの人たちとお話を。
具体的な制作、工房のこと、など作品づくりだけでなく今までの来し方、
まあ生活のこと、そして制作することの愉しみ、思い。
作家の、作り出すアートとの深い関係が、たまたまお話できた少しの方からも
うかがえて。そしてご自身の作品を前にプロセスを語ってくれて、
立体は触らせてくれたり。
ここでも聞かれたのはジャンルなんか作ってる側にはない、ということ。
境界のあいだを探る、あるいは境界を壊していくという姿勢。

ぼくについては、ちょっと、聞きたい、と作品の前に引っ張られて説明、
というのを何度か。人によって聞きたいところ、感心のしかたが違うのが
へえ、と思うけど、とにかく興味を持って、みてもらえたのがうれしい。
言葉にしたらそれは、「オッケーよ」とか「ええよええよ」「おしゃれよ」
とかいう、まあ最高の褒め言葉で…というより、オッケーというそれは、
作るものどうしに通じるもの、連帯感のようなものだと感じていた。

とにかくぼくの二つの作品。
価格をつけて、売れる場合にも備えて、画廊にかけられている。
こういうことも、僕のなかでは、今のように大騒ぎすることでなく、
ふつうのことになっていくのか。とにかくここに立った。
どうなるか、どうするか。これから。

* * *

この展覧会の告知直前に、会員の松岡襄さんの訃報が伝えられた。
松岡さんは七宝焼の作家で、僕は去年の暮れ一度だけ、堺の土塔庵で
お会いして話す機会があった。長身で、顔をかがめて話しかけてくれる
笑顔が優しくて、温厚なお人柄が、僕はいっぺんに好きになった。
今回、お会いできると楽しみにしていた。

先週、松岡さんと奥さんの、できあがったばかりの作品集が届けられていて
そのあとがきに、今年2月に肺ガンが見つかったこと、それが
心臓の真うしろで発見が遅れ、余命が月単位で告げられている
状況であることがつづられていた。
奥様も七宝作家で、お互い何十年も「刺激しあい」「まねしないように」
創作意欲をたかめる日々を積み重ねてきたと書かれていたのが心に残る。

会場では、遺作の下に、長躯の松岡襄さんが
明るい日差しを浴びて佇む写真が飾られていた。

知り合いの「濁音」の三人組が演奏に来てくれていて
歓談がつづく中でのアイリッシュの定番やスタンダード曲。
一区切りついて、なにかリクエストを、という彼らに、じゃあ、と
ぼくは松岡さんへの手向けのつもりで、「朧月夜」をリクエストした。
若い彼らの演奏は、のめるくらいのスピードのワルツになったけど
それもまたいいかな、と思った。

by ichirographics | 2010-12-04 13:06 | 展覧会

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